中学校2年生に薦めたい本100冊vol.7 10月

中学生が進路を考えるための新書本

キャリア教育の充実が叫ばれています。
中学校でも職場体験が実施されいます。
でも、一、二度の体験だけで
子どもたちの職業観が
豊かになるとは思えません。
その補充をするのが
読書ではないかと思うのです。
本にはいろいろな大人たちの
体験談がいっぱい。
ぜひ、これらを読んで
子どもたちが自分の進路を
考えるようになってくれればと
思うのです。

その1
「いのちをはぐくむ農と食」(小泉武夫)

本書は日本の農と食の
未来を考える意図で著されています。
それと同時に「農業」という職業の
重要性とやりがいを、
子どもたちに伝える書として
十分に機能しています。
農業は決して魅力を失っていません。
子どもたちが将来、農業を
職業の選択肢の一つとできるよう、
私たち大人が
環境整備をしていかなければ
ならないのだと思います。

その2
「職人を生きる」(鮫島敦)

本書でいう「職人」とは、
親方なり師匠なりに
指導を乞いながら腕を磨いていく、
子弟制度の残る
伝統工芸等の専門家を指しています。
軟弱な子どもたちに
げんこつを食らわせるような言葉が
随所に並びます。
しかし、本書は
職人紹介の本ではありません。
職業人としての生き方の書、
いや「人生指南の書」なのです。

その3
「表現する仕事がしたい」
       (岩波書店編集部編)

「もしかしたら自分にも
出来るかもしれない」と、
読むと前向きな気持ちに
なれる一冊です。
この本には、漫画家、
ヴァイオリニスト、シンガー、
CMプランナー、映画監督、人形劇師、
狂言師、現代芸術家、チェリスト、
写真家、ギタリスト、
映画監督・脚本家、画家、
全部で13人の
「表現する」仕事に就いている人たちの
声がつまっています。

その4
「医療のこと、もっと知ってほしい」
           (山岡淳一郎)

本書は、これから
職業選択を考えるであろう
中学生・高校生に向けて書かれた、
医療の現状を知り、
その職業としての
魅力を伝える一冊です。
全編を通じて、
人間の命を預かる医療の
最前線の責任の重さと
そこに携わるスタッフの
充実した生き方が
ひしひしと伝わってきます。

その5
「保育士という生き方」(井上さく子)

保育士という職業について
解説されている本はいくつかあります。
本書はそうした職業解説本を超えて
「生き方」まで踏み込んだ本なのです。
きれい事だけではなく、
保育の仕事と
自分の子どもの子育てとの
板挟みになった経緯も
丁寧に書かれています。
実はここに本書の
「生き方について考える」部分が
凝縮されているのです。

その6
「教師という生き方」(鹿島真弓)

「働き方改革」の浸透により、
ブラック公務員といわれる
教員の仕事に、世間の目が
向けられるようになりました。
本書ですが、やはり
教師という仕事のブラックさが
ふんだんに紹介されています。
しかし大切なのはそこではありません。
ブラックで超多忙な環境の中で、
筆者がしっかりと感じている
「やりがい」「達成感」「充実感」こそ
世間に広く知られるべきことなのです。

その7
「スポーツを仕事にする!」(生島淳)

中学生が考える将来の職業で、
意外に多いのが
「スポーツ関係の仕事」です。
でも、「スポーツ関係の仕事」って
具体的に何?と尋ねても、
インストラクター以外の答えは
ほとんど返ってきません。
子どもたちはどんな仕事があるか、
よくわかっていないのです。
そんな子どもたちに
薦められる本はないか?
と探して見つけたのが本書です。

その8
「ドキュメント宇宙飛行士選抜試験」
       (大鐘良一・小原健右)

「君は宇宙飛行士として
やっていく覚悟が本当にあるのか」
これはすべての職業名と
置き換えが可能です。
その道でプロフェッショナルとして
生きていくだけの
「覚悟」を持っているのか?と。
本書は大人にとっては
超一級の自己啓発本であると同時に、
子どもたちにとっては
進路選択の究極の指南書と
なり得る一冊です。

その9
「職業とは何か」(梅澤正)

キャリア教育の充実が叫ばれています。
私が常々疑問に感じていることは、
「自分のやりたいこと」主導の
進路指導です。
「やりたいことを見つける」
それを中学校の進路指導では
繰り返し説くのですが、
私はずっと違和感を感じてきました。
職業選択の基準は
「やりたいこと」だけではないのです。
本書には、そのことが
丁寧かつ明確に書かれてあります。

1~4はおなじみ岩波ジュニア新書です。
それぞれの分野での職業の様子が
詳しく分かるしくみです。
5~9は一般の新書本からです。
注目は5、6のイースト新書Qの
「仕事と生き方」シリーズ。
すでに数冊刊行されていています。
学校図書館必携のシリーズといえます。
8は特に面白かった一冊です。
宇宙飛行士だけにとどまらず、
すべての職業に通じるエッセンスが
ぎっしりと詰まっています。
子どもにも大人にもお薦めです。
9は職業観にかかわる一冊です。
中学校2年生にはかなり難しいのですが、
これを中学生段階で読み、
就職するまでの間に
折にふれて読むことができたなら、
職業選択の幅が大きく
広がるのではないかと思うのです。

キャリアについての学びは
生涯学習にも通じます。
大人の皆さんもぜひいかがでしょうか。

(2020.3.31)

mohamed HassanによるPixabayからの画像

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